統合失調症。
今や罹患する人はおよそ100人に1人の割合と言われ、珍しい病気ではありません。
統合失調症を発症する年齢はさまざまですが、思春期からおよそ40歳くらいまでと言われています。
症状として有名なのは幻聴や幻覚。
例えば、「お隣さんが私の悪口を言っている」「いつもご近所から見張られている」というような、現実には起きていない事が “現実として” 鮮やかに経験されます。
それ以外の症状も非常に多岐に渡り、複数の病気が合わさったものが統合失調症だと言われてもいます。
どんな症状があるの?
1. 陽性症状
幻覚・幻聴…実際にはないものを見たり、聞いたりする症状。主に自分が他者から誹謗されているという妄想が起こります。統合失調症において最も顕著な症例と言えます。
思考障害…考えがまとまらず、脈絡のない話を続けてしまいます。
自我意識の障害…他者に思考を奪われ操られているという観念。「させられ体験」などです。
行動異常…興奮して大声で叫ぶ、逆に黙り込んで止まったまま動かない、おかしな姿勢や動作を繰り返すなどの奇異な行動をします。
2. 陰性症状
感情の平坦化・鈍化…感情表現や表情がなくなったり、物事への関心がなくなったりします。
非社交性…他者に関心がない、他者への共感がない、視線を合わせないといった自閉的な態度を取ります。
意欲の減退…何事にも興味を示さない、集中力がない、以前好きだったことでもやる気が起きないなど、モチベーションが低下します。
思考の低下…考えがまとまらず、人との会話をうまくやりとりできなくなります。
3. 認知機能障害
判断力の低下…何が適しているか、何を選べばいいのか、何を優先すればいいのか、といった判断ができにくくなります。
注意力の低下…どうでもいい物を注視したり、関係ない音が気になったりと、目の前のことや人との会話に集中できなくなります。
記憶力の低下…作業記憶(目の前の仕事をスムーズにこなす為に使う一時的記憶能力)がうまく働かないため、何度も同じことを聞いたり、したりします。
病気の経過と症状
1. 前兆期
何となくやる気が起きない、集中できない、焦りや不安感など、様々な症状が現れます。不眠症状、食欲不振、頭痛、疲労感などもありますが、誰にも起こり得る症状なのでこの段階での統合失調症の診断は難しいと言えます。
2. 急性期
幻覚や、主に幻聴、妄想などの陽性症状が現れます。本人にとって不快な内容が多いので、イライラしたり、暴言を吐く、暴力を振るうなどの、目に見えた異常行動が目立つようになります。考えがまとまらないなどの思考障害も現れます。
3. 消耗期
意欲の減退、感情の起伏が乏しくなるなどの陰性症状が現れます。急性期で消耗してしまい、疲れ切っている状態です。根気や集中力なども続きません。無気力で、いつも寝てばかりで何もしなくなります。精神状態は不安定で、少しの刺激でも、再び急性期の統合失調症の症状を発症させることもあります。
4. 回復期
自分の興味があることから少しずつ関心を取り戻していきます。活動の幅もゆっくりと広がり、本を読んだり、家事をしたりということもできるようになってきます。大体の人は陽性症状は治まり、陰性症状が残ります。
統合失調症の治療方法
1. 薬物療法
統合失調症では「抗精神薬」での治療を中心に行います。抗精神薬は脳内で過剰に分泌しているドーパミンの分泌を抑制し、症状を改善します。抗精神薬には定型抗精神薬(従来型)と非定型抗精神薬(新規)があり、定型抗精神薬は特に陽性症状に顕著な効果を示し、非定型抗精神薬は陽性症状に関しては緩やかに作用し、陰性症状および認知機能障害にも効果があります。
統合失調症で使用される薬としては、他に以下のようなものがあります。
抗不安薬…過度な不安や緊張を和らげ、リラックスした状態を作り出します。
睡眠薬…なかなか眠りに入ることができない、夜中に目が覚めてしまう、朝方に起きてしまう、ぐっすり眠れない、などの睡眠障害を改善します。
抗うつ薬…気分の落ち込み、持続する悲しみなど、抑うつ気分・気分障害を改善します。
気分安定薬…双極性障害(躁うつ病)の治療に効果があり、予防効果もあります。
抗パーキンソン病薬…抗精神薬などによる副作用として起こるパーキンソン症状(手足が震える、小刻みに歩く、動きが遅くなるなど)を改善します。
2. 心理療法
カウンセリングやリハビリテーションによって、患者の抱える困難や社会生活の手助けをします。具体的には下記のようなものがあります。
心理教育…統合失調症は、患者さんに「病識を持ってもらう」ことが重要です。自分が病気であるという認識がなければ、薬の継続などにも支障が出てしまいます。統合失調症は薬の服用を継続するということがとても重要です。その観点からもしっかりとした教育が必要となります。本人教育と家族教育があります。
作業療法…自分の好きなこと、趣味などを通じて、楽しさ、充実感、達成感などの感情を回復させていきます。就労に近い作業なども行って出来ることを増やし、日常生活に必要なコミュニケーション力も培っていきます。
生活技能訓練…SST(Social Skills Training)。社会生活で実際に直面する困難などに対しての対処法を学びます。小さなことでも、「これをやれるようになりたい」ということをグループワークで実践し、対処能力を学びます。
まとめ
統合失調症になる要因やなりやすい人、というのは明確にはわかっていません。
遺伝または心的に負荷がある環境、脳の機能障害などによるとも言われています。
何にせよストレスにずっとさらされているのは良くないということですね。フツーに病んでしまいますものね。
治療としてはとにかく薬物療法を基本としながら、心的負荷を減らす心理療法で社会生活に適合していけるようなサポートを受ける。
再発しやすい病気ですから、本人の自覚と周りのサポートが不可欠です。
自分が、とか、周りの人が……というのはやはりあまり考えたくはないですが、罹患率が高い病気ですから、知識を蓄えておきたいものですね。
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